【進撃の巨人】 never ending dream R18
第30章 永久に碧く~想い~
「…“叶わぬ運命”?」と、ナイルは少し不愉快そうに聞き返した。
「違うだろ、サラ。
お前は“兵士”である事を理由にエリクとの関係を断ち切ったんだ。
それは“叶わぬ運命”などではない。
勝手な“お前の意思”だ。」
冷たく突き放すようなナイルの言葉に、サラは黙り込む。
“叶わぬ運命”か…“勝手な意思”か。
どちらにせよ、あのままエリクとの関係を続けるのは不可能だったはずだとサラは思う。
いつ壁外で命を落とすか分からない女に、縛られ続けるエリクなど見たくなかった。
エリクの心もまた、愛する女の死を意識せざるを得ない生活に、限界を感じていたに違いないだろう。
言葉を返す事もなく、サラは黙って窓の外を見つめていた。
兵団総司令部の門へと馬車が着く。
このままこの話を続けたところで、お互い何も得るものは無いだろう。
そう思ったサラはナイルへと敬礼し、ゆっくりと馬車から降りる。
物言いたげなナイルの視線を背中に浴び、サラは建物へと歩き出した。
「サラ…ひとつ教えてやる。」
門をくぐろうとするサラを、ナイルがそう呼び止めた。
「お前にエリクを紹介してほしいと言ったのはエルヴィンだ。
俺とお前の父親であるエルヴィンは、共に兵士を志した、かけがえのない仲間だ。
だから、俺にはエルヴィンの気持ちが痛いほど分かる。
アイツはお前を兵士になどしたくなかったんだ。
俺にも3人目にしてやっと娘が出来て分かった。
娘の幸せを願わない父親などいない。
父親にとって、娘はやはり特別な存在だ。」
「…そうですか。」
8年前のあの日。
突然、ウォール・シーナに住む鍛冶職人に会いに行くと、サラを連れ出したエルヴィン。
時おり口実をつけては、エリクのもとへサラを送っていた。
あの頃は全く理解出来ずにいた、この不可解な父親の行動。
時間を越えて届いた父親の“想い”を胸に、サラは兵団総司令部へと歩き出した。
【永久に碧く~想い~】おわり