【進撃の巨人】 never ending dream R18
第30章 永久に碧く~想い~
850年
王都・ミットラスの通りを馬車が駆ける。
ふと、車窓から見えた少年達の姿。
その少年達を必死に追い掛ける男。
サラは不思議に思い、向かいに座るナイルへと問い掛けた。
「少年窃盗団…ですか?
王都までこんな状態になっているとは知りませんでした。」
「どこも同じだ。
取り締まるにしても、収容施設はすでに溢れ返っている。」
ウォール・ローゼの壁が破壊されたとの誤報が壁中を駆け巡ったあの日から、すでに10日は経っていた。
しかし、この狭い壁の中で暮らす人々の混乱が収まる事はなく、比較的治安が良いとされてきた王都でさえも、略奪が始まり、完全に秩序は乱れてしまっている。
またいつ壁が破壊されるか分からない恐怖。
このままでは土地や食料を巡り、人同士の醜い争いが始まってしまうだろう。
一刻も早くウォール・マリアを奪還しなければ…。
重苦しい空気をまとった街を見つめながら、サラはそう強く思った。
「お前のその姿…エルヴィンが見たらどう思うだろうな。」
サラの右腕を見ながら、ナイルがそうつぶやいた。
サラの右腕は付け根から10cmほどの場所から無くなり、ジャケットの袖が不自然に下へと垂れている。
「エルヴィンが見たら、きっと悲しんだだろう。」
「それはどうでしょう。
父が生きていたなら、私と同じ事をしたと思います。」
深いため息をつくナイルに、サラはそう答えた。