【進撃の巨人】 never ending dream R18
第9章 出会い~後悔~
兵舎の屋上へ着くと、あまりの明るさにリヴァイは目を見開いた。
頭上高く昇った満月からは、青白い光が降り注ぎ、地上に降りた霜かと疑うほどであった。
そんな青白い光の中、毛布にくるまる後ろ姿があった。
建物の縁に腰を下ろし、長い黒髪を夜風に揺らしている。
その傍らには葡萄酒のボトル、そしてなぜかグラスが2つ並んでいた。
「こんな所で何してやがる?」
リヴァイの問いかけに、サラは振り返った。
「月を見ていたんだ…。」
そう答えるサラの声は、いつもよりも高く、幼い少女のようだった。
リヴァイは、少しの距離を保ち、サラの横に腰を下ろした。
近くの木々を風が揺らす。
その音だけが、満月を見上げる2人の間に流れる。
時おり、葡萄酒を飲むサラの唇から、白い吐息がもれる。
その白い吐息は、澄み切った冬の空へと昇った。
「前回の壁外調査で…父と弟が死んだんだ。」
そう切り出したサラの声も、やはりいつもとは違い、優しく穏やかなものだった。
「…らしいな。」
サラの突然の告白に、リヴァイはそう返した。
「ハンジに聞いたのかい?
彼女はおしゃべりだからなぁ…。」
ふふっと、サラは無邪気に笑った。
明らかにいつもと様子が異なるサラに、リヴァイは戸惑う。
そもそも、サラとこうしてゆっくり話をする機会などなかったリヴァイにとって、サラという人物の全てが謎だった。
冷酷で非情。
崇高な理念を持ち、紅潮した唇からは低く抑揚のない声で言葉を吐く。
それがリヴァイの知るサラだった。
それが今はどうだろう。
こうして毛布にくるまり、澄んだ青い瞳に月を映す姿は、ただの清らかな少女に見えた。