【進撃の巨人】 never ending dream R18
第29章 永久に碧く~運命の人~●
うつむいたままのサラを見て、リヴァイはジャケットの内ポケットから何かを取り出した。
「…お前が持っていろ。」
そう言いながら差し出したのは、血で赤黒く染まってしまった自由の翼の紋章だった。
リヴァイはその紋章をサラの左手に握らせる。
それは他の誰でもない、サラが兵士となったあの日からともに戦い続けてきたミケの紋章であった。
「アイツの生きた証だ。」
サラは握り締めた紋章を、自身の心臓へと強く押し当てる。
“私の右目が見えないから…ミケは私の側にいてくれるの?”
その答えを、もう聞く事は出来ない。
誰も彼の最期を知らない。
もし…私と出会わなければ、ミケには別の未来があったのだろうか。
そんな事を考えてしまう。
憲兵団に入り、誰かと結ばれる…そんな人生もあったかもしれない。
身体を噛み砕かれ、巨人の口の中、彼は最期に一体何を思ったのだろうか。
誰にも看取られず、命を落とした彼の魂は、一体どこへ向かうのだろうか。
腕一本、無くしたくらいでは到底足りない。
彼を…彼等を地獄へ導いたのは間違いなく私なのだと、サラは固く目を閉じ、身体を震わせた。
その瞬間、リヴァイの腕がサラの身体を強く抱き締めた。
無言のまま、ただただサラを強く抱き締め続けるリヴァイ。
息が出来ぬほど、苦しいくらいに抱き締められた。
いつもであれば、すぐさま腕を振り解き、「場所をわきまえろ。」と言ったに違いない。
しかし、自然と頬から流れ出した涙は、リヴァイを求めるかのように、とめどなく溢れ出す。
「…私は…悪魔だ…。
みんなを…地獄へ導いた…。」
「あぁ。
例え悪魔だろうが、俺はお前を離さねぇよ。」
リヴァイの腕の力が増す。
このまま強く抱き締めていて欲しいと、サラは左手をそっとリヴァイの背中にまわした。