【進撃の巨人】 never ending dream R18
第27章 永久に碧く~願い~
「…馬を狙った?まさか…。」
じっと、こちらを見つめている巨人の瞳の奥には、明らかに“人間”の意思が反映されていた。
この巨人が、“アニ・レオンハート”の共謀者なのだろうかとミケは思う。
もしくは、それ以上の大きな力を持った人物か…。
女型の巨人と対峙した時には感じる事のなかった底知れぬ恐怖が、ミケの心を襲った。
巨人の手の中、醜い肉片と化した馬。
人間の脚では巨人から逃れる事は不可能だ。
退路を完全に断たれたミケは、両手の剣を強く握り締めたまま、その場を動けずにいた。
このまま夜まで耐えられるのだろうか。
それとも…無知性の2体の巨人を倒し、あの獣の巨人と戦うべきなのだろうか。
どちらにせよ、今ここで何らかの手立てを打たなくては、生きて帰る事は出来ない…。
「…サラ。」
再び姿を現した愛する女の幻影を胸に、ミケは両手の刃を獣姿の巨人へと向けた。
その瞬間、獣姿の巨人は手の中で握り潰した馬の残骸を、建物の屋上にいるミケ目掛けて投げつけた。
「…っ!?」
飛び散る肉片とともに、ミケは屋上から転げ落ちる。
あまりにも予想外の出来事に、慌てて発射されたアンカーは壁に刺さる事なく空中で弧を描き、地面へと落ちていく。
早く体勢を整えなければこのまま落下する。
硬い地面への衝撃を覚悟したその瞬間、生暖かい巨人の息遣いを感じた。
「っぎゃああ!!」と、耳を裂く悲鳴を上げ、ミケの脚は巨人の口の中で噛み砕かれた。
ミケの身体を、無知性の巨人2体が取り合うように噛み砕いていく。
痛みに悶え苦しむミケの意識に、再びサラの声が聞こえた。
“嬉しいけど…ミケにはきちんと自分の意思で所属兵科を決めてほしいよ。”
あの日、応える事はなかったサラの言葉。
どうしてこんな時でさえも、思い出すのはいつもサラの事なのだろうと、ミケは飛びかける意識の中で思う。
いや、思い出すのではない。
俺は…サラを忘れた事がないんだ。
朦朧とする意識の中、ミケは右手の刃を巨人の顔へと突き刺した。