【進撃の巨人】 never ending dream R18
第26章 永久に碧く~守りたい~●
カチッ…カチッ…と部屋に鳴り響く時計の音。
夢から覚めたサラは、薄暗いランプの明かりに照らされた天井のシミを見つめる。
その青い瞳からは一筋の涙が流れていた。
「………思い出したよ、クレア。」
サラはそうつぶやくと、安心しきった表情を浮かべながら眠り続けるリヴァイの髪を優しく撫でる。
先ほど見た夢…。
サラの頭にはあの15年前の忌まわしき記憶が鮮明に蘇っていた。
あの日…
クローゼットの中に隠れたサラは、目の前で繰り広げられるエルヴィンとクレアの情事に驚き、手に持っていた刀を落とした。
カシャンッと、大きな音を立てて足元へと転がる刀。
その音に、ベッドの上でエルヴィンの身体を受け入れていたクレアは、サラが隠れるクローゼットを見つめた。
クローゼットの隙間からのぞくサラの青い瞳に気付き、一瞬驚いた表情を浮かべたクレアだったが、涙を蓄えたその美しい瞳は、サラをじっと見つめ続けた。
その瞳に吸い込まれていくように、サラは徐々に意識を失ったのだった。
“心的外傷後の記憶障害”
あまりにも残酷で顔を背けたくなる行為に、あの日のサラは意識を失い、そして…その記憶の一部分を欠落させる事で、何とか心を保とうとしていたのだろう。
欠落した記憶…それが無意識に流れる一筋の涙の正体だったのかと、サラはぼんやりとする意識の中で思う。
15年間、思い出す事の無かった記憶…。
それを、どうして今頃思い出したのか?
何となくだがサラは理解出来ていた。
「…あの日のクレアも、今の私と同じ気持ちだったんだ。」
サラは壁に掛けられたエルヴィンの肖像画をそっと見上げながら、リヴァイの髪を優しく撫で続けた。