【進撃の巨人】 never ending dream R18
第26章 永久に碧く~守りたい~●
いつまで経っても兵舎の部屋へ戻らないサラを心配し、様子を見に来たのだろう。
ミケの腕には毛布が抱えられていた。
リヴァイが調査兵団本部を離れ、古城で生活をするようになってからは、度々、団長室の机に伏せて眠ってしまうサラのために、ミケが毛布を掛けに来てくれるようになった。
朝目覚めると、必ず肩から掛けられている毛布を見て、サラは何度顔をほころばせたことだろう。
無口で不器用なミケの優しさを、サラは知っていた。
しかし、そんな“優しい”ミケは、思わず顔を背けたくなるような光景を前に、愕然たる表情を浮かべている。
いつもであれば、目が合うとすぐに視線をそらすミケであったが、今はそんな余裕すらないのだろう。
その瞳はまばたきをするのも忘れ、じっとサラを見つめている。
「…サラ?」
ミケの唇が、わずかにサラの名前を呼んだ。
その瞬間、サラは人差し指を立て、そっと自身の唇に押し当てる。
“静かにして。”
そう訴えかけるように、ミケの顔を見つめた。
リヴァイの眠りを妨げないでほしい。
穏やかな眠りの世界へ落ちたリヴァイを、この残酷な世界に呼び起こす事などしたくはない。
そんな想いから、サラは今にも取り乱してしまいそうなミケを制止する。
私は…リヴァイを守りたいんだ。
ミケ…例え君が傷付こうとも…。
そんなサラの想いが通じたのか、ミケはうつむくと、団長室のドアをゆっくりと閉め、その場を後にした。
パタンと小さな音を立て、閉まるドア。
その音にサラの胸はわずかに痛む。
しかし、後悔はなかった。
“リヴァイの心を守りたい。”
ミケの来訪にも気付かずに、子供のような寝顔を浮かべているリヴァイを、サラは再び抱き締め、きつく目を閉じた。