【進撃の巨人】 never ending dream R18
第26章 永久に碧く~守りたい~●
サラは胸元のループタイを緩め、シャツのボタンを外す。
作戦が失敗に終わった事による絶望感からなのか、それとも仲間を失った喪失感からなのかか…息苦しさで胸が押し潰されてしまいそうだった。
“団長…あなたには、人間としての心が無いのですか!?”
先ほどの男子兵士の言葉が頭をよぎる。
“人間としての心”
サラはループタイを強く握り締め、そっと瞳を閉じた。
壁外へ出る以上、多大な犠牲は覚悟の上だ。
皆、個を捨て、公に心臓を捧げた兵士。
死に方など選べやしない。
いつ、どのような形で自分の命が終わりを迎えようとも、最善を尽くし戦う。
それが兵士として生きる自分達に与えられた使命だ。
しかし、壁外に散っていく者達の命を軽視した事などは一度も無かった。
皆、寝食を共にし、同じ目的のために戦ってきた仲間であり家族だ。
失っても良かった命など、一つとして無い。
それでも…決断の時は必ずやってくる。
どんなに心が悲鳴を上げようとも、立ち止まる事は許されない。
あらゆる展開を想定した結果、仲間の命が危うくなろうとも選ばなくてはいけなかった。
100人以上の仲間の命と、壁の中の人類の命。
「私は…選んだ。
仲間の命を切り捨てる事を。
…父さんも、きっとそうしたでしょ?」
サラはそうポツリとつぶやく。
“人間としての心”
そんなものはとうの昔に捨て去った。
そうでなければ、下せない決断もあった。
何かを得るためには、何かを捨てなければならない。
何も捨てる事が出来ない人間には、何も変える事は出来ない。
「父さん…。
私は一体何を捨てれば、あなたの“夢”にたどり着く事が出来るのですか?」
サラは壁に掛けられたエルヴィンの肖像画をそっと見上げた。