【進撃の巨人】 never ending dream R18
第26章 永久に碧く~守りたい~●
850年
団長室に戻ると、サラはジャケットを脱ぎ捨て、ソファーへと倒れ込んだ。
仰向けになり、薄暗いランプの明かりに照らされた天井のシミを見つめる。
その青い瞳からは一筋の涙が流れていた。
第57回壁外調査のため、サラ率いる調査兵団がカラネス区壁門を出発したのは今朝の事だ。
エレンの持つ巨人の力を使い、シガンシナ区の壁に開けられた穴を塞ぐ。
今回の壁外調査は、エレンをシガンシナ区へ送るための“試運転”…。
しかし、本当の目的は違った。
最初に壁が破壊された5年前のあの日から、壁内に潜伏している巨人化の力を持った人物。
エレンをおとりに使い、その人物を壁外で生け捕りにする。
それが今回の壁外調査の本当の目的であった。
実際、調査兵団がカラネス区を発った直後、その人物は姿を現した。
陣形の中、エレンを奪うために現れた女型の巨人。
100人余りの兵士達の命と引き換えに、一時は女型の巨人を捕獲するも、力及ばず…作戦は多大な犠牲者のもと、失敗に終わってしまった。
調査兵団本部へと帰還した生存者達の心は、わずかに持ち帰る事が出来た死者の亡骸を前に、絶望の淵へと沈む。
空高く昇っていく弔いの炎を前に、1人の男子兵士が泣き崩れた。
“どうして、俺達には…作戦を教えていただけなかったのですか!?”
“もし、あの女型の巨人の存在を知っていれば…死なずにすんだ兵もいたはずです!!”
“団長…あなたには、人間としての心が無いのですか!?”
サラが今回の作戦を伝えていたのは、最初に壁が破壊された5年前から生き残っている兵士のみだった。
巨人化の力を持った諜報員のような人物は、5年前のあの日から壁内に発生したとの想定から、サラはそこで線引きをした。
敵の正体も、目的も分からない。
ましてや、敵が何人いるのかすら把握出来ていない。
そんな中、サラが下した非情ともとれる決断は、100人余りの仲間の命を見殺しにする結果となったのだ。