【進撃の巨人】 never ending dream R18
第25章 永久に碧く~交差~
「ミケ…手を離してくれないか?」
穏やかな口調でそう告げるサラの顔を、ミケは見ようとはしなかった。
元々、サラの顔をあまり直視する事のないミケであったが、自分の心を完全に読まれてしまっていた事への戸惑いからか、ミケはうつむいたまま、サラの手をきつく握り締めていた。
「ミケ…?」
首を傾げ、サラはミケの顔を覗き込む。
ミケの肩越しに見えた夕日の眩しさに、一瞬目を細めた…その時だった。
サラの柔らかな唇に、ミケの唇が重なった。
ほんの少しのキス。
唇に触れるだけの優しいキス。
サラの唇を包み込むようなミケの唇からは、わずかに煙草の匂いがした。
不意の出来事に驚き、サラは無言でミケの頬を叩いた。
パンッという痛々しい音が団長室に響き渡る。
先ほどまでの穏やかな口調でのやり取りが嘘であったかのような、怒りに満ちた音。
ミケは叩かれた頬を押さえながら、フッと鼻で小さく笑った。
「ミケ…ごめん。」
突然キスをされたとはいえ、大切な仲間であるミケに手を上げてしまった事をサラは詫びる。
頬を押さえながら黙り込むミケの腕を掴み、サラは「痛かっただろ?」と言った。
「あぁ、痛い。
いつもそうだ。
お前を見ていると“胸”が痛む。」
「どうしたんだよ?
ミケ…今日の君はおかしいよ。」
「おかしいか…。
俺はいつだって真面目だ。
次回の壁外調査では、部隊の大多数を失うだろう。
俺達だって…生きて帰って来れる保証は無い。
お前の命にも、俺の命にも…必ず終わりは訪れる。
“永遠”など無い。
だからなのか…最近、よく思うんだ。
俺にはあと何回、お前に触れるチャンスが残されているんだろうと。
力ずくでも抱いておけば良かったと…そう思う日がくるのかもしれないと。」