【進撃の巨人】 never ending dream R18
第25章 永久に碧く~交差~
850年
「…ハンジの様子は?」
夕暮れ迫る、調査兵団本部の団長室。
窓辺にたたずむミケの後ろ姿へ、サラは手元の陣形図に視線を落としたまま問い掛けた。
「モブリットが何とか落ち着かせた。
今はトロスト区支部の部屋で眠っている。」
「そうか…。」
ハンジの指揮のもと、トロスト区支部の敷地内で生態調査を行っていた2体の巨人が、夜明け前、何者かによって殺された。
見張りの兵士が気付いた時には、既に犯人は立体機動で立ち去った後だった。
兵士の犯行である可能性が高いと、今朝から訓練兵を含むトロスト区内にいた全兵士の立体機動装置を調べたが、未だ犯人は特定されないままだ。
巨人の捕獲に成功したのは今回が初めての事ではなかったが、巨人との交流に生き甲斐を感じているハンジにとって、それは“被験体が殺された”以上の衝撃だったに違いない。
蒸発していく2体の巨人を前に泣き崩れるハンジの姿は、あまりにも悲惨で目も当てられないほどだった。
「サラ…。
お前の言う通りになった。
“壁の破壊を目的とした諜報員のような人物が兵団内にいる。
そしてそれはエレンと同様、巨人化の力を持った人間。”
信じがたい事だが、どうやらお前の読みは正しかったようだ。」
「えぇ、2体の巨人を殺したのは間違いなく、兵団内にいる諜報員のような人物だろう。
最初に壁が破壊された5年前のあの日から、壁内に潜伏している巨人化の力を持った人物…。」
「“エレンをおとりに使い、その人物を壁外で生け捕りにする。”
それが、1ヶ月後に控えた壁外調査の本当の目的か…。」
「えぇ。
奴等にとって、エレンは“想定外”の存在。
だからこそ、せっかく破壊したトロスト区の壁の穴が、巨人化したエレンによって塞がれる様子を黙って見ていたんだ。
壁外に出れば、必ず奴等はエレンを奪いに姿を現すはずだ。」