【進撃の巨人】 never ending dream R18
第24章 エルヴィン・スミス①
「私の名前は…サユリです。
サユリ・ノギ。」
まるで呪文のような美しい名前。
空が明るくなりはじめた頃、俺達は再び約束を交わした。
1週間後の同じ時刻、またこの場所で会おうと。
サユリが反対側の山道を下っていく姿を見届けた後、俺は訓練兵団の兵舎へと戻る。
俺の心は、サユリという存在で満たされていた。
“君が好きだ。”と伝える事は出来なかったが、それでも彼女と過ごした時間は俺にとってかけがえのないものとなった。
しかし…兵舎の部屋へと戻った俺の心は、一気に現実へと引き戻される事となる。
机の上に無造作に置かれた、所属兵科の希望を記入する用紙。
調査兵団になる…それ以外の選択肢は俺には無い。
それなのに、どうしてだろうか。
サユリの存在が…俺を踏みとどまらせる。
愛しい人との未来。
亡き父の仮説を証明するという使命。
子供の頃からの夢…。
ふと、手を入れたズボンのポケットの中では、サユリに渡しそびれた甘いビスケットが粉々に砕けてしまっていた。