【進撃の巨人】 never ending dream R18
第24章 エルヴィン・スミス①
彼女は詠い終えると、空高く昇る半輪の月を見上げた。
美しい横顔。
その横顔に、俺は深い安堵を覚える。
脚の傷は病んでなどいなかった。
ましてや狼に襲われたわけではない。
彼女がこうして無事でいてくれた。
何よりもそれが嬉しかった。
「…もし良ければ、もっと聴かせてくれないか?」
俺は彼女の横顔に、そう声をかけた。
彼女がゆっくりと振り返る。
“幻”のように美しいが、決して“幻”などではない。
俺の目の前に、確かに彼女は立っている。
俺の顔からは思わず、笑みがこぼれた。
しかし、彼女はそんな俺に、深々と頭を下げた。
「約束を破ってしまい、申し訳ありませんでした。」
俺は慌てて「いや…いいんだ。」と、彼女に顔を上げるよう促す。
しかし、彼女はなかなか顔を上げようとはしてくれない。
「君が無事であったのなら良いんだ。
狼に食べられてしまったのではないかと、心配していたんだ。」
その言葉に、彼女は目を丸くさせながら顔を上げた。
そして…
「あなたは…やっぱり不思議な人ですね。」
そう言いながら、ふふっと彼女は笑ってくれた。