【進撃の巨人】 never ending dream R18
第24章 エルヴィン・スミス①
彼女との約束の日から、8日後の事だった。
この日も俺は、消灯時間の過ぎた兵舎を抜け出し、湖へと向かっていた。
ズボンのポケットには、甘いビスケット。
自分でもおかしいと思った。
これほどに誰かを想い続けた事など、今まで無かったのだから。
「今日は月がよく見えそうだ。」
足を止め、そうつぶやきながら空を見上げる。
木々の間から、わずかに見える夜空には、いくつもの星が輝いていた。
湖まで行けばもっと綺麗に見えるだろう。
そう思い、歩き出した。
その時だった。
彼女の詩が聞こえた。
“キミ ヲ オモエドモ ミエズ ユシュウ ニ クダル”
あの、不可思議な呪文のような詩。
深みのある声。
間違いなく彼女の詩だった。
その瞬間、俺の心はトクントクンと鼓動を早めた。
“彼女がいる。”
そう確信した俺は、山道を駆け上がり、湖へと向かう。
嬉しさからなのか、脚が絡まり、何度も転びそうになった。
早く彼女に会いたい。
会って…話しがしたい。
会って…“君が好きだ。”と伝えたい。
辺りが開け、湖が見えた。
空には、出会った日と同じように半輪の月がかかっている。
その月明かりを浴び、湖に向かいながら詠う後ろ姿。
夢にまで見た彼女に、俺はついに会う事が出来た。