【進撃の巨人】 never ending dream R18
第24章 エルヴィン・スミス①
小さな悲鳴をあげ、彼女はその場に倒れ込んでしまった。
「大丈夫かっ?」と、慌てて駆け寄る俺の目に映ったのは、彼女の脚から流れる赤い血であった。
折れた木の枝に脚を引っ掛けたのだろう。
その傷口は浅いが、白い肌から流れる血は、とても痛々しいものであった。
「怪我をさせてしまって、すまない。」
俺は彼女を介抱すべく、ズボンのポケットからハンカチを取り出す。
しかし、次の瞬間、彼女は驚くべき行動に出たのだった。
彼女は俺が近付くと、近くに転がっていた木の枝を握り締め、その折れた先端を、自身の喉に向けてあてがえた。
予想だにしていなかった彼女の行動に驚く俺の顔を見つめながら、彼女はか細い声で「…あなたは…憲兵団ですか?」と、言った。
その言葉に、俺は先ほどの彼女の詩が、この壁内の世界では御法度とされている行為である事を悟る。
壁外の文化。
呪文のようだと思ったあの言葉も、壁外の言葉…すなわち、彼女の故郷の言葉なのだろう。
見慣れない顔立ちにも、納得がいく。
昔、父に教わった事がある。
この壁の中には、わずかであるが“東洋人”と呼ばれる民族がいる事を。