【進撃の巨人】 never ending dream R18
第23章 咽び泣く~決意~●
「兵長に許可を頂いていたとはいえ、待機命令を破り、無断で外泊をしてしまい申し訳ありませんでした。」
そう深々と頭を下げ続けるエルドへ、サラは詰め寄る。
「いや…そんな事より、体調はどうだったんだ?」
調査兵団へ編入した当初から「子供が欲しい。」と言っていたエルド。
2ヶ月前、やっと夢が叶ったと顔をクシャクシャにしながら喜んでいた。
普段であれば規律に厳しい調査兵団において、無断外泊などあってはならない事。
しかし、今は愛する妻と、お腹に宿った新しい命の方が大事だ。
表情を曇らせたままのエルドを見つめながら、祈るような気持ちでサラはただ言葉が返ってくるのを待った。
「はい、今はもう体調も戻り、自宅で休んでいます。
お腹の子供も無事です。
ただ…今回の事で、“子供が無事に産まれる”という事は、奇跡に近い事なのだと…思いしりました。
妻の身体に宿りさえすれば、“当たり前”に産まれてくるとばかり思っていたので…。
父親、失格ですね。
俺が楽観的になっている間も、妻は必死に小さな命を守ろうとしていたなんて…申し訳ない気持ちでいっぱいです。」
エルドはそう言うと、馬の鬣を撫でながら沈んだ表情を浮かべた。
そんなエルドへ、サラは「そうか。」と一言だけ応える。
無事であったのは喜ばしい事なのだが、エルドの言葉の重さに、サラは言葉を詰まらせた。
普段、壁外で命のやり取りをしている調査兵は、嫌でも“死”を身近に感じざるを得ない環境に置かれていた。
命の重さを…命の尊さを、重々理解しているつもりでだった。
しかし、エルドの言う通り、人の命はいくつもの“奇跡”の上に成り立っているのだろう。
なぜかサラの青い瞳には、父であるエルヴィンの姿が浮かんだ。