【進撃の巨人】 never ending dream R18
第23章 咽び泣く~決意~●
エルドが調査兵団への編入を希望したのは、それから1ヶ月後の事だった。
壁外調査の度に大勢の死者が出る調査兵団では、慢性的な人員不足が問題となっていたため、エルドほどの実力者の入団は、調査兵団にとって大きな力になるだろうと誰もが彼の編入を喜んだ。
しかし、サラだけは違った。
サラだけはエルドの編入に難色を示した。
それは、彼が“既婚者”であるという事が大きな理由だった。
調査兵団に入団するとなれば、兵団内での共同生活が義務付けられる。
そうなれば、愛する妻が待つ家に帰れるのは、月に一度位なものだろう。
もちろん、壁外調査で命を落とす危険もある。
調査兵の父親を持ち、母親の苦悩を間近で見ていたサラは、どうしてもエルドの入団を手放しには喜べなかった。
「生涯を共にすると誓った愛する女を、孤独にさせてしまうかもしれないんだぞ?」
そう問い掛けるサラに、エルドは真剣な眼差しで答えた。
「“調査兵団に入り、この世界から巨人を絶滅させる。”
どうすれば、愛する人を本当に守る事が出来るのか…これが、自分なりに考えて出した答えなんです。」
そこでサラは、一つ、条件を付ける事でエルドの編入を認めた。
その条件とは、当時はまだ企画段階であった特別作戦班でリヴァイの“右腕”となり戦う事だった。
陣形の中を状況に応じて、自由に動く事の出来る特別作戦班。
通称リヴァイ班。
調査兵団の中で最も危険な任務を与えられる班だ。
その班への配属を条件に、サラはエルドの調査兵団編入を許可した。
特別作戦班の兵士には、強い精神力が求められる。
愛する者のために死に物狂いになれるエルドの精神力は、特別作戦班には相応しいと考えたのだ。
それに加え、当時兵団内では孤立気味であったリヴァイとの相性が良かったのも、サラがエルドを特別作戦へ起用した大きな要因の一つだ。
今となっては、エルドもリヴァイ同様、調査兵団には不可欠な存在となり、既婚者という安心感からか、若い女性兵士からの人望も厚い。
そんなエルドから“子供が出来た”と嬉しい報告を受けたのは、つい2ヶ月前の事だった。