【進撃の巨人】 never ending dream R18
第23章 咽び泣く~決意~●
遠くからは鳥の鳴き声が聞こえていた。
山へと帰って行く鳥の鳴き声。
朱色の空は色を変え、辺りを暗闇が包んでいく。
私は薄暗い格技場の中、いつまでも父の腕の中にいた。
震える私の身体をきつく抱き締め、優しく頭を撫でる父。
すでに弟は学校から帰って来ている時間だ。
壁外調査の事後処理も終わっていないだろう。
これから壁外で命を落とした兵士達の“弔いの儀式”もある。
それなのに…父はいつまでも私の側にいてくれた。
温かい腕の中、私はふと、父の顔を見上げる。
いつものように、仮面を被ったような表情。
しかし父の瞳は、床へと転がる母の刀をじっと見つめていた。
「…父さん。
私、知ってるの。
どうして母さんが…死んでしまったのか。」
私は父の胸に顔を埋め、そうつぶやいた。
今思えば、どうしてそんな事を言ってしまったのだろうと思う。
そんな私の言葉に、父は「そうか。」と、抑揚の無い声を返した。
「父さんがいない間、いつも母さんは…私に剣舞を教えてくれた。
あの呪文のような…不思議な詩も。
あの日…私は弟とふたりで広場に出かけたの。
その時、口ずさんでしまったの。
そこへ憲兵団がやってきて…
“その歌は誰に教えてもらったの?”
そう…聞かれた。」
震える声で話す私の頭を、父は優しく撫で続けていた。