【進撃の巨人】 never ending dream R18
第22章 咽び泣く~違和感~
今すぐこの狭いクローゼットから飛び出し、父の腕の中へと飛び込む事が出来たなら、どんなに幸せだろうか…。
しかし、私にはそんな事が出来るはずもない。
父も、そんな私など望んでいないだろう。
触れたいのに、触れられない。
うなだれる父の姿を、じっと見つめていたその時だった。
「エルヴィン分隊長、いらっしゃいますか?」
コンコンコンと、ドアをノックする音とともに、可愛らしい女性の声が廊下から聞こえた。
聞き慣れた声。
普段よりもやや高めではあったが、私が彼女の声を聞き間違えるわけがない。
心がざわめきだす。
ベッドへと腰を下ろす父の表情が、わずかに緩んだような気がした。
「クレア…入りなさい。」
父の呼び掛けに、部屋のドアがゆっくりと開く。
「執務室にいらっしゃらなかったので、こちらでお休みかと思いまして…。」
そう遠慮がちに話すクレアの表情は、いつもよりも女性らしく見えた。
透き通るほどの白い肌に浮かぶ桃色の頬は、父への“特別な感情”があってのものだろう。
ゆっくりと脚を引きずりながら、クレアはベッドへ腰を下ろす父へと近付いた。
「クレア…こっちへ来なさい。」
そう言いながら、クレアへと優しく差し伸べられた父の手に、クレアの細長い指先が触れる。
触れたいのに、触れられなかった父の身体。
そんな父の身体へと、クレアはいとも簡単に触れてしまったのだ。