【進撃の巨人】 never ending dream R18
第22章 咽び泣く~違和感~
両手で優しく持ち上げたシャツからは、かすかに父の匂いがした。
私はシャツの襟元に頬を寄せ、そっと目を閉じる。
まるで父に抱き締められているような、そんな感覚が押し寄せ、少しだけ胸が熱くなった。
この頃の私には、“本当は父へ甘えたい”という気持ちが、まだどこかにあったのだと思う。
物心付いた時から、母と弟との3人の生活。
年に数回しか帰らない父の膝の上は、いつも弟の場所。
時おり、私達が眠りについた後、台所で涙を流す母。
“父さんがいない間は、母さんも弟も、私が守らなきゃ。”
そう思っていた事も事実だったが、もし私が父に会いたいとぐずれば、母が悲しむのではないかと、いつも寂しい気持ちを押し殺し、母を困らせたくない一心で、私はいつも平気なふりを続けていた。
そして…気が付けば、私は父と一定の距離を保つようになってしまっていた。
いつも仮面を被ったような表情の父。
この調査兵団本部で暮らすようになってからも、私と父の距離が縮まる事は無く、数ヶ月後にはここを離れなくてはならない。
私はただ…父の匂いがするシャツを、強く強く抱き締め続けていた。