【進撃の巨人】 never ending dream R18
第22章 咽び泣く~違和感~
父にはなぜか、部屋に鍵をかけるという習慣がなかった。
少なくとも、私達がこの調査兵団本部で暮らすようになってからは、一度も部屋に鍵をかけた事は無いだろう。
2年前、女子棟で暮らしなさいと、私を部屋から追い出した父であったが、こうして鍵のかかっていない部屋へと自由に出入り出来てしまっていたのだから、何とも物騒な話だ。
幹部棟にある父の部屋の前へ着くと、私はドアに耳を押し当て、中の様子を伺う。
部屋の中に人の気配は無く、弟もまだ学校から帰って来ていないようだった。
私はゆっくりとドアノブを回し、わずかに開けたドアの隙間から、身体を滑り込ませるようにして部屋の中へと入る。
窓の締め切られた部屋は蒸し暑く、外からはかすかに鳥の鳴き声が聞こえていた。
私は床に四つん這いになると、ベッドの下へと手を伸ばし、重い刀を引きずり出す。
早く部屋を後にしなければ…そう思い、立ち上がった私の視線に止まったのは、ベッドの上に置かれていた父の大きなシャツだった。
所々にシワがあり、無造作に袖だたみされた白いシャツ。
ほんの数時間前まで、父が着ていたに違いないそのシャツ。
気が付くと…私はそのシャツへ、ゆっくりと手を伸ばしていた。