【進撃の巨人】 never ending dream R18
第22章 咽び泣く~違和感~
「サラ、どこへ行くんだ?」
机の書類へと視線を落としたまま、キースは団長室から出ていこうとする私へ声を掛ける。
「今日はもう部屋へ戻る。
キース団長も、ひとりの方がはかどるでしょ?」
そう答える私へと、キースは笑いながら「すまないな。」と、つぶやいた。
その日も、キースの机へと高く積まれた書類は一向に減る気配が無く、苛立ちを見せ始めたキースが放つ重苦しい空気に、私は居心地の悪さを覚え、団長室を後にした。
いつにも増して余裕の無いキースの様子から察するに、壁外調査が間近に迫っているのだろうと、私は廊下の窓から兵士達の訓練を眺めながら思う。
立体機動の訓練を行う兵士達にも、どこか緊迫した雰囲気が漂っていた。
汗ばむ初夏の昼下がり。
眩しすぎる日差しの中、樹木を彩るように芽吹いた新緑を、生ぬるい風が優しく揺らしていた。
兵舎の部屋へと戻る気にはなれなかった。
もし、クレアに見つかりでもしたら、また言い争いになってしまいそうな気がしたからだ。
こんな日は、格技場で剣舞の稽古をし、心を落ち着かせたい。
そう思い、私はベッドの下に隠してある刀を取りに、誰もいないであろう父の部屋へと向かった。