【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
850年
頭上から振り下ろした刀が空気を振るわせ、床に置かれた手持ちランプの炎を揺らした。
独特の節回しをした呪文のような詩を詠い、力強く舞う。
その妖艶なサラの舞姿を、リヴァイの三白眼が見つめていた。
「…初めて見る舞だ。」
舞終えて、腰へと携えていた刀を脱刀するサラに、リヴァイはそうポツリとつぶやく。
「“クガツ ジュウサンヤ ジンチュウ ノ サク”。
君の前で披露するのは初めてかもしれないな。」
そう言うとサラは、壁にもたれるリヴァイの横へと腰を下ろした。
消灯時間が過ぎ、しんと静まり返った調査兵団本部の格技場。
明日に迫った壁外調査に気持ちが高ぶり、眠れない夜を過ごしていたサラは、部屋着である大きめのシャツのまま、剣舞の稽古に汗を流していた。
そんなサラを追うかのように格技場へとやって来たリヴァイは、無言のまま壁にもたれ、サラの舞姿をただ見つめる。
いつにもまして真剣な表情を浮かべ、食い入るように剣舞を見つめていたリヴァイに、サラは思わず笑みをこぼした。
「君は…剣舞が好きなのか?」
「いや…こんな狭くて汚ねぇ場所にひとりじゃ、お前が“寂しい”んじゃないかと思っただけだ。」
「…君は優しいんだな。」
「バカ言え。
俺は元々結構優しい。」
サラは、ふふっと笑いながら、刀を古めかしい袋へとしまう。
もうそろそろ、兵舎へと戻らなければ。
明日も日の出とともにここを発つ。
これ以上、リヴァイを付き合わせるわけにはいかない。
サラはおもむろに立ち上がると、横に佇むリヴァイの唇へそっとキスをする。
「おやすみ。」
柔らかな唇を重ね合わせ、そうささやいた。