【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
「…あっ、モーゼス。」
女子棟の部屋へと戻る途中、私は向かい側の男子棟の廊下を歩くモーゼスを見つけた。
早くケーキを渡さなければ。
私は駆け足で、モーゼスのもとへと向かった。
「モーゼス!!」
そう呼び止める私へと、モーゼスは子供のような笑顔を向ける。
「何だよ、ちびまゆげ。」
兵舎の出入り口。
私服姿のモーゼスに、私はやっと会う事が出来た。
「こんな所で何してるんだ?」
いつものように、クシャクシャと頭を撫でるモーゼスに、なぜか私の心臓は鼓動を速める。
きっと、全力で走ったせいに違いない。
私は乱れる呼吸を何とか落ち着かせ、紙袋に入ったケーキを手渡そうとした。
その時だった。
「これから、出掛けてくるよ。」
モーゼスが微笑みながらそう言った。
「どこへ行くの?」
せっかく会えたモーゼスがまた遠くへ行ってしまう。
私は不安げな表情を浮かべながら、そう問い掛けた。
「恋人の所だよ。」
嬉しそうにモーゼスは微笑む。
“恋人”
その言葉に、鼓動を速めていた私の心臓は、突然キリキリと傷み出したのだった。