【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
「サラちゃん、卵を割ってくれる?」
誰もいなくなった食堂の厨房を借り、私とクレアはケーキを作る。
クレアがどうして突然ケーキを作る気になったのかは謎であったが、きっと部屋で休んでいるメラニーのためなのだろうと、私はクレアの指示通り、慣れない手つきで卵を割った。
案の定、粉々になった卵の殻がボウルの中へと落ちる。
「強く握っちゃダメだよ。」
クレアは笑いながら、器用に卵の殻をすくい取ってくれた。
母と一緒に料理を作った記憶は無かった。
母が台所へと立っている間、私はいつも弟の遊び相手をしていたからだ。
こんな風に、母に料理を教えてもらえていたのなら、きっと卵くらいは上手に割れるようになっていただろうと、ボウルの中で角を立てるメレンゲを見つめながらそう思った。
生地を型へ流し込み、オーブンで焼く。
その間にクレアが作ってくれたカスタードクリームは、甘い甘いバニラ砂糖の香りがした。
「クレア、袖にクリームがついてる。」
恥ずかしそうに袖についたクリームを拭き取るクレアの服からも、甘い甘いバニラ砂糖の香りがした。