【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
モーゼスは壁外調査から帰還した直後、ウォール・ローゼ内の病院へと運ばれ、昨晩、この調査兵団本部へ戻って来たと言っていた。
「じゃあな、ちびまゆげ。」と、いつものように訓練へ向かうモーゼスの後ろ姿を、私はじっと見つめる。
モーゼスが生きていた。
ただその事が嬉しくて、私は弾むような足取りで団長室へと向かった。
団長室には、やはりキースの姿は無く、いつものように書き置きだけがテーブルの上に残されていた。
しかし、これからもモーゼスと会える嬉しさに、キースのいない寂しさなど、すっかりかき消されてしまっていた。
私は読みかけの本を取り出し、壁際のソファーへと寝そべる。
しおりが挟んであるページを開いた、その時だった。
「サラちゃん、いる?
ちょっと、手伝って欲しい事があるの。」
ドアをノックする音とともに、可愛らしいクレアの声が聞こえた。
私は読みかけの本を元の場所へと戻し、急いでドアを開ける。
クレアは乱れた髪を整えるような仕草をし、少し恥ずかしそうに、こう言った。
「サラちゃん、これからケーキを作るんだけど、手伝ってもらえないかな?」
頬を赤らめ、柔らかな笑顔を浮かべるクレア。
その姿は、やはり絵本の中に出てくるお姫様のようだと、10歳になった私は、あらためてそんな事を思っていた。