【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
調査兵団の帰還から5日後、負傷したメラニーを介抱するクレアを横目に、私は鏡台の前で髪をひとつに結わえる。
モーゼスから母の話を聞いてからというもの、私はこうして時おり髪をひとつに結わえ、亡き母の面影を、鏡の中の自分から見つけ出そうとしていたのだった。
「行ってきます。」
私はいつものように団長室へと向かう。
今日もキースは、壁外調査の事後処理で留守であろう。
また今日もひとり、真っ白な画用紙へと色を塗って過ごさなければ。
そんな事を考えていた。
団長室のある廊下へとさしかかる。
毎朝、ここでモーゼスと雑談をしていたのは、つい10日ほど前の事だ。
私はしんと静まり返った廊下を、うつむきながら歩いた。
その時だった。
廊下の向こう側から、ひとりの足音が聞こえてきた。
聞き覚えのある足音。
間違えるはずがない。
“じゃあな、ちびまゆげ。”
そう言いながら、去っていく後ろ姿を、いつも見つめていたのだから。
私は、涙に濡れる顔をゆっくりと上げる。
目の前に立っていたのは、穏やかな笑みをこぼすモーゼスだった。