【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
「サラちゃん、もう少しで終わるから。」
「もう、これでいいよ。」
次の日もまた、髪を結おうとするクレアから逃れるかのように、私は女子棟の部屋を飛び出し、団長室へと向かった。
こんな事なら、いっそメラニーのように髪を短くしてしまった方がいいのではないか。
そう思ったりもしたのだが、私はなぜか、この長い黒髪を切る気にはなれなかったのだ。
兵舎と兵団本部をつなぐ渡り廊下を通り、団長室のある廊下へとさしかかる。
そこには、昨日出会った金髪の男…モーゼスの姿があった。
「よぉ、サラ。」
モーゼスはそう微笑みながら、私の頭をクシャクシャと撫でる。
突然名前を呼ばれた事に驚き、満面の笑みを浮かべるモーゼスの顔を、私はただ見上げる事しか出来なかった。
「お前…どこかで見た事あると思ったら、シガンシナ区出身なんだってな。
メラニー副分隊長から聞いたよ。
俺もシガンシナ区出身だ。
お前、よくうちに来ていた“東洋人の親子”だろ?」
そう言うとモーゼスは、身体をかがめ、私の顔を覗き込む。
その、こぼれんばかりの笑みは、幼い頃の記憶の中、どこか見覚えのあるものであった。
「果物屋さん?」
私は首を傾げ、そうつぶやく。
幼い頃、母と弟の3人で通った、シガンシナ区にある青果店。
“サラちゃん、今日はリンゴをおまけしとくわね。”
そう言いながら、花のような笑顔を浮かべる青果店の女店主に、モーゼスの笑顔はとても良く似ていた。