【進撃の巨人】 never ending dream R18
第21章 咽び泣く~戸惑い~●
「俺はモーゼス・ブラウンだ。」
男はそう言うと「じゃあな、“ちびまゆげ”。」と、強引に私の頭を撫で、その場を去っていった。
“モーゼス・ブラウン”
廊下へと消えていくその背中を、私はじっと見つめていた。
団長室へ行くと、いつも机に座り、難しい顔をしながら書類を眺めているはずのキースの姿がどこにも無かった。
「…キース団長?」
私はいつものように、壁際のソファーに腰を下ろす。
ふと、テーブルの上に書き置きがある事に気が付いた。
『王都へ行ってくる。
画用紙とクレヨンは机の引き出しに入ってるので、好きに使いなさい。』
達筆すぎるキースの字は、子供が読むには難しい。
私はいつも、その暗号のような文字を解読するのに苦労していた。
私は本棚から読みかけの本を取り出し、再びソファーへと腰を下ろす。
栞をはさんでいたページをめくり、ふと思い出したのは、先ほど出会ったばかりの男…モーゼスの言葉だった。
“お前、友達いないだろ?”
…友達。
弟にはいる“友達”。
そして、みんなにもいるであろう“友達”。
本の中にも出てくる“友達”。
私は…友達がいない。
私はバンッと勢いよく本を閉じると、机の引き出しから画用紙とクレヨンを取り出す。
キースが私のためにと、父には内緒で買って来てくれた真っ白い画用紙。
その真っ白い画用紙に、私はひたすらクレヨンで色を塗り続けた。
それはまるで、心の中にふつふつと沸き起こる“何か”を塗りつぶしているかのようだった。