【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
「兵長、突然申し訳ありません。
あの…よろしかったら、お飲みになって下さい。」
そう言いながら、ペトラは書類で埋め尽くされた机へと、おもむろにティーカップを置いた。
柔らかな湯気とともに、芳しい紅茶の香りが、苛立つリヴァイの心を優しく包む。
「ご無理をなさらないで下さい。」と、微笑むペトラへ、リヴァイは「あぁ、いつもすまねぇな。」と、穏やかな口調を返した。
こうして、執務室で仕事をする自分の元へ、ペトラが紅茶を届けてくれるようになったのはいつからだろうとリヴァイは考える。
あれは、確か1年前。
リヴァイ班の編成が大きく変わり、腕の立つ新兵2人を班員として迎え入れた頃だった。
それは、間近に迫る壁外調査におけるリヴァイ班の動きを伝えるため、執務室へと班員を招集した日の事だ。
緊張感漂うリヴァイ班の元へと、紅茶の注がれた人数分のティーカップを運んで来てくれたのがペトラだった。
“美味い紅茶だ。”
“いれ方にコツがあるんです。
私でよろしければ、いつでもいれて差し上げます。”
その日から、リヴァイが執務室で仕事をしていると、決まってペトラが紅茶を届けてくれるようになっていた。
「では、失礼いたします。」
敬礼をし、ペトラは執務室のドアへと歩いて行く。
その後ろ姿を、リヴァイは紅茶をすすりながら眺めていた。
腰まである艶やかな栗色の髪。
小柄で丸みを帯びた女性らしい身体つき。
ふと、その後ろ姿にサラが重なり、リヴァイの表情がわずかに緩む。
その時だった。
不意に振り返ったペトラと、リヴァイの視線が交わった。
憂いを帯びた寂しげな表情。
次の瞬間、ペトラは椅子に腰掛けるリヴァイへと駆け寄り、その唇にキスをした。