【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
夏の夕暮れの風は心地良く、水滴をまとった黄色い花々を優しく揺らしていた。
花の手入れを終えたサラとペトラは、花壇の縁にそっと腰を下ろす。
夕日に染まり始めた空を眺めながら、ペトラがポツリと口を開いた。
「私には、訓練兵時代からの恋人がいるんです。」
その言葉に、かき乱されていた感情が、わずかにほぐれていくのを感じた。
噂話は好きではないが、先ほどのナナバの話が、心のどこかに引っかかっていたのだろうとサラは思う。
“リヴァイとペトラが恋人関係なんじゃないかって、新兵の間で噂になってるらしいよ。”
ペトラにはきちんと恋人がいるじゃないか。
これだから噂話は嫌なんだよ。
サラは腕を組み、流れる朱色の雲を見つめた。
「今、こうしている間でも、彼に会いたくて仕方ないんです。
会いたくて、会いたくて、たまらなくなるんです。
彼にだって事情はあるのに…。
だから、少しでも気を紛らわせたくて。
でも…私にはもう無理です。
今すぐにでも彼に会いたい。
こんなに、自分の気持ちばかりを押し付けてしまうなんて、最低ですよね。」
そう話すペトラの瞳からは、一筋の涙がこぼれていた。
澄んだ大きな瞳が夕日に照らされ、美しさをまとう。
サラはジャケットからハンカチを取り出し、ペトラへと差し出す。
ペトラはそのハンカチを受け取ると、申し訳なさそうに「…ありがとうございます。」と、つぶやいた。
「きっと…君は恋人の事が“好き”なんだろうな。
好きで、好きで…たまらないといったところだろ?」
ハンカチでそっと涙を拭うペトラへ、サラは優しく問い掛けた。
「はい…。」
なぜ、そんな当然の事を聞くのだろうと、ペトラは不思議そうにサラを見つめる。
サラはそんなペトラへと、憂いを帯びた微笑みを向けた。
「“好きになる事”と、“愛する事”は違うんじゃないか?」
その言葉に、ペトラの瞳がわずかに潤んだ。