【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
その日から、私は学校へ行く事をやめた。
毎朝、教科書の入った鞄を持ち、キースのいる団長室へと向かう。
団長室の壁際に置かれたテーブル。
そこが私の机になった。
不思議な事に、あんなに退屈だった学校の勉強が、キースが隣にいるというだけで、とても楽しいものに思えた。
読み書きを覚え、本をたくさん読み、私の毎日は充実したものへと変わっていった。
父はそんな私の行動を見ても、もう何も言ってくる事はなかった。
そもそも、私とゆっくり言葉を交わす暇など父には無かったのだから、当然の事だ。
とにかく、私はキースと過ごせるようになった事が嬉しくて仕方がなかった。
キースもまた、私が側にいる事が嬉しいと笑ってくれた。
ただ…一度だけ、キースの悲しげな顔を見た事がある。
あれは、いつものようにキースの膝の上でチョコレートを頬張っていた時の事だ。
「…頼みがあるんだ。」と、申し訳なさそうな表情を浮かべ、キースは遠慮がちにこう言った。
「ここでは…この団長室の中では、私を“お父さん”と呼んでくれないか?」
困った表情を浮かべる私に気付くと、キース
は「すまなかったな。」と、つぶやいた。
あの時の悲しげなキースの顔を、私は生涯忘れる事は無いだろうと思う。
強く、たくましいキース団長。
あの日、悲しげな顔を見せたキースは、いつまでも私の小さな手を、きつく握り続けていた。