【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
その日の夜、部屋へと戻って来た父は、いつものように無言で着替えをすませると、私達とともにベッドへ入り、いつものように抑揚の無い声で絵本を読んでくれた。
きっと叱られるに違いないと思っていた私は、いつもと何ら変わりのない父の姿が不気味で仕方がなかった。
それどころか、まるで昼間の出来事が嘘であったかのように、父は私を抱き上げ、膝の上へと座らせてくれた。
父の膝の上。
そこはいつも弟の場所だった。
「とーさん、だっこして。」と、ぐずりだす弟を、「順番だ。」と、なだめながら、父は膝の上に乗せた私の髪を、ブラシで優しく梳かしてくれた。
父のゴツゴツした大きな手。
慣れないせいなのか、絡まった毛先を、父はなかなか解けずにいた。
「…自分でするからいい。」と、私はすぐに父の膝の上から降りた。
「そうか、すまない。」
そうポツリとつぶやく父の顔は、きっといつものように仮面を被ったような顔であったのだろう。
不器用な父の心情を察せられるほど、あの頃の私は大人ではなかったのだ。