【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
「キースはお花屋さんね。」
そう言いながら、私はキースの机の脇に、中庭で摘んできた草花を並べる。
書類へとペンを走らせていたキースは、フッと笑いながら私の頭を優しく撫でた。
この日も私は、弟の昼寝に付き合い、ベッドですやすやと眠ってしまったクレアの目を盗み、キースのいる団長室を訪れていた。
暑い暑い夏の日。
大きく開いた窓から入り込む風が、カーテンをヒラリと揺らしていた。
「サラは花が好きか?」
キースは机に並べられた草花を手に取り、そう問い掛ける。
「うん。好き。」
恥ずかしそうに頷く私を、キースは優しく抱き上げ、膝の上へと乗せてくれた。
「壁の外にはな、壁の内側には無い花がたくさん咲いているんだ。」
キースが時おりしてくれる壁外の話は、いつも幼い私の心をときめかせてくれた。
今まで読んだどの絵本よりも、魅力的に思えた壁外の話。
この頃からだろうか。
私はいつか壁外へ行ってみたいと、願うようになっていた。
「そうだな…いつかサラを、壁外へ連れて行ってやるからな。」
「本当っ!?」
突然のキースの言葉に、私は瞳を大きく見開く。
「あぁ、何度でも連れて行ってやる。」
キースはそう言いながら、私の頭をクシャクシャと撫でた。
「約束だよ。」
「あぁ、約束だ。」
初めて交わすキースとの約束。
壁外には一体何があるのだろう。
きっと壁外には、私の知らない世界が広がっているんだ。
私は瞳を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。