【進撃の巨人】 never ending dream R18
第20章 咽び泣く~生き方~
あの日を境に、私はクレアの目を盗んでは、キースがいる団長室を訪れるようになっていた。
特に何をするわけでもなく、壁際に置かれたソファーに座り、難しい顔をしながら机へと向かうキースを眺める。
ただ、それだけの事が私には嬉しかった。
時おり思い出したようにキースは私の方を向き、笑顔で手招きをする。
それは、“こっちへ来て膝に座りなさい。”の合図だった。
キースは私を膝に乗せると、決まって机の引き出しから取り出したチョコレートをくれた。
キースの傷だらけの手から渡される一かけのチョコレート。
甘い甘いそのチョコレートを口いっぱいに頬張る私を、キースはいつも温かな眼差し見守っていてくれた。
そんなある日、私は突然クレアに問い詰められた。
「サラちゃん、このチョコレートは誰にもらったの?」
洗濯カゴに入っていた私のズボンのポケットから、チョコレートの包み紙が出てきたとクレアは言った。
「…キースにもらったの。」
「キースって、シャーディス団長の事?」
「シャーディス団長?」と、首を傾げる私に、クレアがそれ以上を問う事は無かった。
しかし、「きちんと“団長”って呼ばないとダメだよ。」とだけ、クレアは言った。
“キース・シャーディス団長”
そう、私にとってキースは…あの頃からずっと“キース団長”のままなのだ。