【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
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門の外には既に馬車が来ており、中には不機嫌そうに腕を組むリヴァイの姿があった。
燕尾服に身を包み、髪は分け目を付けず、後ろへと撫で上げている。
サラは御者に出発するよう告げると、馬車へと乗り込み、不満げにリヴァイの向かい側で脚を組んで座った。
「おい。
何て格好してやがる。
壁外調査にでも行くつもりか?」
ドレスの上に羽織った調査兵団のジャケットを見るなり、冷やかすようにリヴァイがそう問い掛けた。
「私は…このジャケットが好きなんだ!!」
頬を赤らめ、サラはそう口をとがらせる。
そんなサラを見て、リヴァイは呆れたような表情を浮かべた。
「君こそ…まるで仮装大会だな。」
「あ?ふざけてるのか、てめぇは?」
いつもとは明らかに異なるリヴァイの出で立ちに、サラは思わず笑いが込み上げる。
気乗りしないにも関わらず、こうして身支度を整え、黙って自分に同行してくれるリヴァイを、サラはいつも以上に愛おしく感じていた。
「君が…こんなにも私の指示に従順だとは思わなかったよ。」
腕を組み、馬車の車窓から街並みを眺めていたリヴァイへと、サラは穏やかな笑みを向けた。
サラの突然の言葉に、リヴァイは瞳を大きく見開くと、再び呆れたような表情を浮かべる。
その呆れたような表情さえも、サラにとっては妙に心地良く、愛おしさの感じるものだった。
「 俺は…お前の指示以外、聞く気はねぇ。
お前の判断ならば信じれる。
つまり…俺にとっちゃ、お前の命令は絶対だ。」
そう言うと、リヴァイは再び車窓から流れる街並みに視線を向けた。
傾き始めた朱色の光が、馬車の中へと差し込み、美しく撫で上げられたリヴァイの黒髪を艶やかに輝かせている。
サラは腕を組み、そっと背もたれに身体を預けると、リヴァイの横顔をまじまじと見つめた。
「君は…本当に面白い男だな。」
“人類最強”とうたわれる男の純朴な姿に、ドレスの事などすっかりと忘れ、サラは、ただひたすら笑い続けた。