【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
「…1年後、彼の事がどうしても忘れられなかった私は、彼を追って訓練兵団に入団したの。
でも…もう遅かった。
彼の心は、別の女性へと向いていたの。」
そこまで話すとナナバは、サラの顔を真っ直ぐ鏡へと向けさせ、「ほら、出来た。」と、優しく微笑んだ。
鏡に映る自分の姿に、サラは瞳を大きく見開く。
“魔法使い”
まるで別人のような自分の姿に、サラは先ほどのナナバの言葉を思い出した。
「次はドレスに着替えないとね。」
そう言いながら、ナナバはハンガーに吊されたドレスへと手を伸ばす。
そんなナナバの後ろ姿を、サラは鏡越しに見つめた。
「ねぇ、ナナバ。
その…好きだった男が調査兵になったから、君も調査兵を志願したのか?」
サラの問い掛けに、ハンガーからドレスを外すナナバの手が一瞬止まった。
「…違うよサラ。
“好きだった男”じゃない。
“好きな男”だよ。
彼は…好きな女性を追って、調査兵団に入団したの。
もちろん、そんな彼を追って1年後に私も調査兵団に入団したんだ。」
ナナバはそう言いながら、少女のように無邪気に笑う。
「その…“好きな男”は、今どうしているんだ?」
「生きてるよ。
だって彼は強いもの。
今でも…好きな女性に想いを寄せ続けてる。
彼ったら…本当、バカだよね。
片想いなんて疲れるだけなのに…。」
サラの問い掛けに、そう笑いながら答えるナナバの瞳には、憂いの色が滲み出していた。
そして、その複雑な心中を表しているかのように、ナナバは視線を落とすと、一点を見つめまま口をつぐんでしまった。
「ほら、早く着替えちゃって。
遅れたら元も子もないでしょ。」
そう言いながら、ナナバは鏡台の椅子に座ったままのサラの手を引っ張り、そっと立ち上がらせる。
ナナバの温かい手の感触が、サラの手へと…優しく伝わった。