【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
サラの艶やかな黒髪が、美しい毛流れを作り、徐々に後頭部でまとめられていった。
時おり「痛くない?」と尋ねながら、ナナバは丁寧にサラの髪を内側へと折り込んでいく。
「後ろでひとつに束ねたら、それをねじりながら巻き上げて折り込むの。」
ナナバは楽しそうにそう説明するが、今までひとつに結わえた事しかないサラに、その手順を理解出来るはずもなく、「また、君にお願いするよ。」と、優しく微笑んだ。
「ねぇ、ナナバ。
美容師を志していたはずの君が、どうして調査兵になったんだ?」
サラの問い掛けに、ナナバは一瞬悲しげな表情を浮かべ、「それはね…」と、穏やかな口調で語りはじめた。
「1年後、その女性は死んでしまったの。
ほら、子供の頃、伝染病が流行ったじゃない?
女性が死んだ後、その家に残されたのは、女性の旦那さんと、私よりも1歳上の男の子だった。
ほら、さっき庭でタオルを干すのを手伝ってた男の子がいたって言ったじゃない。
その男の子。
もともと父親は仕事が忙しくて、帰りはいつも夜中だったから、母親がいなくなった事で、彼は家にひとりぼっちになってしまったの。
そんな彼を、私の母は不憫に思って、彼の父親が帰って来る夜までの間、私の家で彼を預かる事になったの。
うちはもともと兄弟が多かったから、“ひとり増えたところで何も変わりはしない。”って母が。
私…それがすごく嬉しかったの。
彼がうちに来てくれて。
だって…毎日眺めていたんだもん。
庭でタオルを干す彼の姿を。
子供って、残酷だよね。
彼の母親が亡くなったのに、彼と過ごせるようになって嬉しいだなんて。
…私は彼に恋をしてしまっていたの。
数年後、15歳になった彼はこう言った。
“訓練兵団に入団する。”…って。」