【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
「6歳の時だった。
私の家の隣に、赤い三角屋根の小さな平屋の家が建ったの。
まるでお人形の家のようなその可愛らしい外観に、幼い私の胸はときめいた。
きっと、お人形のような可愛らしい女性が住むんだろうと、私は毎日自分の部屋の窓からその家を眺め、住人が越してくるのを心待ちにしていたの。
私の想像通り、越してきたのは金髪の長い髪をした素敵な女性だった。
しばらく経ってから、その女性は毎日、庭にたくさんの真っ白いタオルを干すようになったの。」
「タオル?」
「そう。何十枚もの真っ白いタオル。
不思議じゃない?
それも毎日だよ。
タオルを干す女性の側には、いつも私と同じ年くらいの少年がいて、毎日手伝いをしていたの。
その光景を、私は毎日窓から眺めていたんだから、おかしいでしょ?」
「幼い君の姿が目に浮かぶよ。」
「でしょ?それで…
ある日、母が突然こう言ったの。
“お隣さんで髪を切ってもらいなさい。”って。
そう、その女性は美容師だったの。
ほら、美容室ってたくさんタオルを使うじゃない。
そのタオルだったんだよね。
私は小さい頃から癖毛が嫌で、今まで母や祖母にしか切ってもらった事がなかったから、とても緊張したのを今でも覚えてる。
その女性は私の髪を優しく触りながら、丁寧にハサミを入れてくれたの。
一体どんな風に変身するんだろうって、私は鏡越しに女性の手元ばかりを見つめていた。
今思うと変な子供だよね?
数十分後、出来上がった髪型を見た瞬間、きっとこの女性は“魔法使い”なんだって思った。
今まで大嫌いだった癖毛を、初めて可愛いと思えたの。
不思議だった。
嬉しくて、その日は真っ直ぐ家に帰らずに、遠回りして街を歩いたの。
変身した自分を色んな人に見て欲しかったんだよね。
笑えるでしょ?
誰も私なんか見ていないのに。
その日から、私の夢は“美容師”になったの。」
サラの長い黒髪を優しく触りながら、ナナバは恥ずかしそうにそう語る。
そんなナナバの手元を鏡越しに見つめながら、サラは穏やかな表情を浮かべ、「うん。うん。」と相づちを打った。