【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
「ねぇ、サラ。その髪で行くの?」
腰まである艶やかな長い黒髪を、無造作に片側へと寄せただけのサラを見つめ、ナナバはにこやかにそう問い掛ける。
もともと化粧や髪形に対し無頓着だったサラは、壁外調査や立体機動の訓練時のみ髪をひとつに結わえる程度で、それ以外はほとんど下ろしている事が多かった。
毎日の手入れも、ただ絡まらないようブラシで梳かすだけという簡単なものだ。
「どうしても…女性らしい格好は苦手なんだ。」
そう言いながらうつむくサラに、ナナバは「もったいないよ。」と、優しく微笑む。
「せっかくこんな素敵なドレスを着るんだから、せめて髪形くらいは作った方がいいんじゃない?」
ナナバは手に持っていたドレスを元の場所へと戻し、部屋に置かれた鏡台の椅子へ座るようサラへと促した。
「もう、時間も無いし…。」
「いいから、任せて。」
戸惑うサラを、ナナバは強引に鏡台の椅子へと座らせる。
鏡越しに目が合うと、ナナバはふふっと笑いながら、慣れた手つきでサラの長い黒髪をまとめていった。
「櫛はある?」
「えぇ。」
サラは鏡台の引き出しから櫛を取り出し、ナナバへと手渡す。
櫛を使わずとも、既にサラの髪は美しい輝きを放ちながら、後頭部でひとつにまとめられていた。
「大したものだな…。」
そうため息まじりにサラはつぶやく。
「慣れれば簡単だよ。」
ナナバは丁寧に櫛を使い、髪の流れを整えながら、少しづつサラの髪を巻き上げていった。
「私ね…本当は美容師になりたかったの。」
少し恥ずかしそうに、穏やかな口調でナナバはそう話す。
「美容師?」
真剣な表情でサラの髪を巻き上げていくナナバの顔を、サラは鏡を通して見つめた。