【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
「…誰だ?」
ドアノブを握り締め、父がこのまま通り過ぎてくれる事を祈る私の背中に、低くかすれた男の声がそう尋ねた。
私は慌てて後ろを振り返る。
そこには、窓際に置かれた机に向かい、手元の書類へと視線を落とす男の姿があった。
父と同じキャメル色のジャケット。
ひどく疲れた様子で、書類へとペンを走らせるその男の目元には、くっきりと濃いクマが出来ていた。
「…あっ…。」
私はその男が醸し出す独特の雰囲気に、思わず黙り込んでしまう。
「…ノックぐらいしたらどうだ?
無礼な奴だ。」
男はそうつぶやくと、手元の書類から私へ、ゆっくりと視線を移した。
私の顔を見るなり、驚いたように男の瞳が大きく見開く。
「…子供…?」
男がそうつぶやいた、その時だった。
部屋のドアをノックする音がした。
「エルヴィン・スミスです。
書類をお持ち致しました。」
父の声だった。
父に見つかってしまう…。
予想外の事態に、どうする事も出来ない私は、すがるような瞳で机に向かう男を見つめた。
「…お前は…エルヴィンの娘か…。」
男はそう言うと、壁際に置かれたソファーを指差した。
「…隠れていなさい。」
私は急いでソファーの下へと隠れる。
その姿を確認し、男は「入りなさい。」と、ドアの向こう側にいる父へと声を掛けた。
「失礼致します。
お預かりしておりました、書類の作成が終わりました。」
「あぁ…ご苦労だったな。」
父は両手に抱えた大量の書類を男へと手渡す。
「団長、クレア・カーティスの件ですが…。」
「彼女の件は君に全て任せる。」
「はっ。承知しました。」
私は息を殺し、父達の会話が終わるのをただ待ち続けた。
「では、失礼致します。」
父が部屋を後にする。
バタンというドアの音が、部屋の中に小さく響いた。