【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
「…待って…。行かないで…。」
部屋にひとり残された私は、頬を伝う涙を拭い、閉じられたドアを見つめながらつぶやいた。
脚を引きずりながらも、バタバタと廊下を走り去るクレアの足音が、徐々に遠のいていく。
弟に怪我をさせてしまった…。
自分のしてしまった事への後悔が、小さな胸を襲った。
「トージ!!クレア!!」
私は部屋を飛び出し、医務室へ向かったふたりの後を追いかけた。
長い廊下を走り、階段を駆け下りる。
既に見えなくなってしまったクレアの後ろ姿を、必死に探した。
「ねぇ…どこ?」
以前、弟が高熱を出した際に1度だけ行った事があった医務室。
幼い私は、医務室がどこにあるのかを覚えてなどいなかった。
1階に下り、兵舎から本部へと繋がる渡り廊下を歩く。
普段は立ち入ることを禁じられていた調査兵団本部。
確かに調査兵団本部の1階に医務室はあった。
しかし、それが一体どの部屋なのかは分からない。
私は廊下に面した数あるドアの前を、迷い歩いた。
その時だった。
突き当りの廊下の先から、足音が聞こえてきた。
コツンコツンと足早にこちらへと向かって来る足音。
その足音がクレアではない事は確かだった。
私は壁に身を隠し、そっと足音のする方を覗き見る。
そこにいたのは、大量の書類を抱え、こちらへと向かって来る父の姿だった。
“本部へは何があっても絶対に近づくな。”
以前、父の言っていた言葉が頭をよぎる。
私は慌てて1番近くにあったドアを開け、部屋の中へと隠れた。
本当ならば…弟に怪我をさせてしまい、医務室を探しているのだと父へ伝えれば良かったのだと思う。
しかし、あの時の私は…弟の怪我よりも、自分が叱られるのではないかという気持ちの方が勝ってしまっていたのだ。