【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
それは夏を思わせる、暑い5月の昼下がりだった。
その日はなぜか…父が部屋を出た後、クレアは私達のもとへとやって来なかった。
「クレアは?なんでクレア来ないの?」と、弟はぐずり出す。
「もう少ししたら、きっと来てくれるよ。だから待ってよう。」と、私は弟の頭を撫でた。
「お絵描きは?」
「…ヤダ。」
「絵本は?」
「…ヤダ。」
「じゃあ…あやとりしようか?」
弟の表情が徐々に歪んでいき、その瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
私がいくら声を掛けようとも、弟はドアの前でひたすらクレアの名前を泣き叫び続けた。
床に転がり、手足をばたつかせて泣きじゃくる弟へ、私は紙とペンを差し出す。
「クレアに絵を描いてプレゼントしようよ。
きっと、喜ぶよ。」
しかし…弟は私から紙とペンをむしり取ると、力いっぱい床へと叩きつけた。
「クレアと一緒じゃなきゃヤダ!!」
弟は床に散らばる紙を、クシャクシャと丸めて投げつける。
「ダメだよ。そんな事しないで。」
制止する私の腕を振り払い、弟はかんしゃくを起こしたように、次から次へと紙をグシャグシャにしながら泣きわめいた。
自分の描いた絵でさえも、弟は「こんなのいらないもん!!」と、破り捨てていく。
そして…当たる物が無くなった弟が次に手にしたのは、クレアと初めて会った日に私が描いた、お姫様と王子様の絵だった。
“サラちゃんは、お姫様になりたいの?”
“…ううん。王子様になりたい。 お姫様は弱いから…。
お姫様を守る王子様になりたい。”
少し悲しそうな顔をして笑う、クレアの顔を思い出した。