【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
廊下を歩く足音が聞こえた。
普段であれば、こんな時間に兵舎をうろつく者などいないはず。
弟は「とーさん?」と、描き掛けの絵を放り出し、ドアへと駆け寄った。
足音が部屋の前で止まり、コンコンコンと、ドアをノックする音がした。
父は自分の部屋のドアをノックする事などない。
父ではない事に気付いた弟は、慌てて私の後ろへと隠れた。
「サラちゃん、トージ君?
中にいるの?
開けてもいいかな?」
ドアの向こうから、可愛らしい女性の声がした。
父に連れられ、私達がこの兵舎へ来てからというもの、父以外の人間との接触は無いに等しかった。
いつも私達は、父が食堂から持って来た食事を部屋で食べていた。
週に数回許される入浴も、消灯時間が過ぎた後に、誰もいなくなった男子棟の風呂へと入っていた。
ここへ来て初めて耳にする、父以外の人間が自分達の名前を呼ぶ声。
「…誰ですか?」
緊張からか、ドキドキと鼓動を速める胸を何とか落ち着かせ、私は震える声で問い掛けた。