【進撃の巨人】 never ending dream R18
第18章 咽び泣く~親を夢む~●
私達を脚の間に乗せ、父はシガンシナ区から馬を走らせる。
「サラちゃん、トージ君、元気でね。」
アルレルト夫妻は涙をこぼしながら、私達を見送ってくれた。
何も語らず、ただ黙々と馬を走らせる父の姿を見て、もしかすると母の所へ向かっているのかもしれないと、私はわずかな希望を胸に抱く。
ふと、家の方を振り返る私に、父は「前を向いていなさい。」と言った。
ひどくかすれたその声に、幼い私は父が泣いているような気がしたのを覚えている。
温かい父の体温を背中に感じ、私は弟を抱き締めながらぼんやりと空を見上げた。
初春の空はとても青空で、時おり風が運んでくる草花の芳しく眩い香りの中、私は母を想った。
きっと、母さんはお姫様で、悪い奴らにさらわれてしまったんだ。
父さんは強いから、きっと悪い奴らをやっつけて、母さんを助けてくれる。
だって、父さんは王子様だから。
そんな絵本の中のような話を、あの時の私は必死で空想していた。
もう、母が帰って来ない事に気付いていたはずなのに。