【進撃の巨人】 never ending dream R18
第18章 咽び泣く~親を夢む~●
幼い私には、その言葉の意味を上手く理解する事が出来なかった。
今日、母さんは帰って来ないんだ。
その位にしか、私は思っていなかった。
「とにかく、入ってちょうだい。」と、アルレルト夫人は私達を家の中へと招き入れる。
「…母さんが心配するから、お家で待つ。」
そんな私の言葉に、アルレルト夫人が答える事はなかった。
数十分後、慌てた様子で家へと戻ってきたアルレルトさんは、部屋の中でホットミルクを飲む私と弟を見るなり、両手で私達をきつく抱き締めた。
私達を探し、シガンシナ区中を歩き回っていたのだろう。
肩で大きく息をしながら、「大丈夫。心配するな。」と、何度も何度もつぶやいていた。
「明日には君達のお父さんが迎えに来るはずだ。
今日はうちに泊まりなさい。」
そう話すアルレルトさんの瞳は、涙で溢れていた。
温かいスープとパンをご馳走になり、寝室のベッドへと寝かされた私達だったが、寂しさからか「かーさん、かーさん。」と、弟は泣き続けた。
アルレルト夫人は、そんな弟を胸に抱き、優しくなだめてくれた。
やがて泣き疲れ、眠りへと落ちた弟の横顔を見ながら、私は母の事を思った。
明日、父さんが迎えに来てくれる。
母さんも…明日にはきっと帰って来るはず。
また、みんなで一緒にご飯が食べられるんだ。
そう信じて疑わなかった。