【進撃の巨人】 never ending dream R18
第18章 咽び泣く~親を夢む~●
「トージ、先に行かないで。」
歩くのが大好きだった弟は、いつも私を追い越し、ひとりで先を行ってしまう。
そんな弟を追いかけながら、その日も遊び場である広場へと向かった。
初めは私達も、他の子供達と同じように追いかけっこをしたり、拾った石で地面に絵を描いて遊んでいたような気がする。
ただ、その日はなぜか弟が石拾いに夢中になってしまい、飽きてしまった私は近くにある花壇の縁に腰を下ろした。
その時、口ずさんでしまったんだ。
母がいつも稽古の時に詠っていた詩を。
呪文のような不思議な言葉の詩を。
「お嬢ちゃん、その歌は誰に教えてもらったのかな?」
振り返ると、そこには見たことのない中年の男性が2人立っていた。
父と同じキャメル色のジャケット。
ただひとつ違っていたのは、胸に刻まれた紋章が“自由の翼”ではなかったという事。
「おじさん達に教えてくれるかな?
その歌は誰に教えてもらったの?」
内気で物静かだった私の心臓は、ドクンドクンと鼓動を速める。
男達の視線がとても怖かった。
そして私は、うつむきながらこう答えた。
「…母さん。」
男達が去っていく。
この狭い壁の中の世界において、タブーとされてきた母の行為を、愚かな私は憲兵へと密告してしまったんだ。