【進撃の巨人】 never ending dream R18
第16章 強く結ぶ~嫉妬~●
「俺は哀れな男だ。
壁の中に自分の居場所を感じた事などなかった。
壁外で巨人と対峙する事によって、自分の存在価値を見いだそうとしていたんだ。
自分は特別な存在であると…選ばれし者であると。
必死だった。
俺は巨人を倒す事だけを考え、生きていた。
そして…愛する妻と娘を失った。
そんな時、俺はお前と出会った。
絶望の淵に立たされた俺の心を奮い起こさせたのは、紛れもないお前のその笑顔だ。
自分が団長になったからには、これまで以上の成果が出せる、皆が俺を認めると…そう信じていた。
しかし、俺にはそんな力は無かった。
たくさんの仲間を…部下を見殺しにした。
そんな時だ。
お前の父であるエルヴィンが『長距離索敵陣形』なるものを考案したのは。
エルヴィンは俺と違い、聡明な男だ。
仲間や部下からの人望も厚く、彼の指揮能力の高さは明らかだった。
しかし…俺はエルヴィンの意見を聞き入れる事はなかった。
俺は…お前の父であるエルヴィンの力に嫉妬していたんだろうな。
俺は自分の力に限界を感じていた。
もはや調査兵団に俺の存在意義など無いんだと。
しかし、俺の側にはいつもお前がいてくれた。
お前という存在が俺の心の支えだった。
お前だけが俺の全てだった。
そんなお前が調査兵団を志し、訓練兵団に入団するとエルヴィンに聞かされた時には、言葉では言い表せないほどのショックを受けたよ。
俺の責任だと思った。
俺は無意識のうちに、お前が壁外に興味を持つよう仕向けていたんだと。
潮時だと思った。
俺は全てをエルヴィンに委ね、調査兵団を去ったんだ。
そう…俺はお前を理由にし、ここから逃げ出したんだ。」
うわごとのように、淡々とした口調で語るキースの手を、サラは両手でしっかりと握り締めた。