【進撃の巨人】 never ending dream R18
第16章 強く結ぶ~嫉妬~●
「私は少し席を外しますね。」と、女性医師が医務室から出ていく。
ゆっくりと話が出来るようにと、彼女なりの気遣いなのだろう。
廊下の足音が遠ざかると、キースは天井を見つめながら大きくため息をついた。
「お前に心配をかけたくなかった。
だからこそ、お前が団長室へ出入りする事を禁じた。
しかし、結局はお前の世話になってしまうとは…本当に申し訳ない。
書面の事となると、どうも苦手でな。
昔からお前の父であるエルヴィンに任せきりだった。」
「えぇ、知っています。
隣で見ていましたから。」
「そうか。」と、キースは力なく笑う。
窓の外では、兵士達が立体機動の訓練を行っていた。
柔らかな春の日差しに暖められ、新芽が出始めた落葉樹の間を、兵士達が飛び交う。
時おり剣の刃に太陽が反射し、キラキラと幻想的な光をかもし出していた。
そんな光を窓の外から受け、キースはうわごとのようにつぶやいた。
「サラ…手を握らせてくれないか。」
キースは毛布の隙間から、ゆっくりとサラに手を伸ばす。
その傷だらけの大きな手を、サラは両手で包み込んだ。
「いつまでたっても…お前の手は小さいままだな。」
「いえ…、キース団長の手が大きいだけですよ。」
照れ笑いを浮かべるキースを見つめ、サラはふふっと笑った。
キースの温かく大きな手に、サラは懐かしさを覚える。
この手に何度助けられた事だろう。
ふと、蘇った幼い頃の思い出を、サラは心の中でそっと愛おしんだ。
そんなサラの心情をさえぎるかのように、キースは口を開く。
「もう9年も前になるのか…。
お前の父であるエルヴィンに全てを委ね、俺は団長を退いた。
調査兵団結成以来、団長が生きたまま交代したのは初めての事だった。
なぜだか分かるか?
お前を理由に、俺はここから逃げ出したんだ。」