【進撃の巨人】 never ending dream R18
第16章 強く結ぶ~嫉妬~●
「恋人に突然別れを告げられたんです。
いつ壁外で命を落とすか分からない調査兵とは、もう付き合えないと…。」
ローターはため息混じりにそう語る。
「皆そうだ。
何かを犠牲にして、ここにいる。
君が失わなければならなかったもの、それが恋人だっただけの事だ。」
サラは遠い眼差しをしながら答えた。
「…ずいぶんと俺には冷たいんですね?
女子兵士にそんな事を言ったら泣いてますよ?」
「君は泣かないだろ?」
大きめのカップを両手に持ち、サラは見透かしたような微笑みをローターに向ける。
「そうですね。」と、ローターは照れ笑いを浮かべた。
サラはふと、喉の奥に違和感を覚えた。
風邪は治ったはずなのに、喉の奥から全身にかけ、徐々に体温が上がっていく。
頭がぼんやりとし、身体を起こしているのもままならないほどだった。
「ローター、悪いが少し気分が悪くなってきた。」
サラはテーブルにほおづえをつき、うなだれる。
荒々しくなる呼吸から、ほんのりと酒の香りがした。
「サラさん、もう少し付き合って下さいよ。」
ローターはそう言いながら立ち上がると、サラの横へと腰を下ろした。
「俺…かわいそうだと思いません?
慰めて下さいよ。」
ローターは、うなだれるサラの顔をのぞき込む。
「サラさんの唇って、柔らかそうですね。」
ローターはサラの腰へと手を回した。
「…触るな!!」
ローターの手を払いのけようとしたサラは、バランスを崩し、椅子から転げ落ちた。
ガタンッという大きな音がしたわりには、あまり身体に痛みを感じない。
1年前、初めて飲んだ葡萄酒に酔い、兵舎の屋上から転落した時の事をサラは思い出す。
あの時もこうして、音のわりには痛みを感じなかった。